第49回日本SF大会 2010 TOKON10
首都大会EDO―電脳金魚の大冒険―
2010年は東京でSF大会

第49回日本SF大会 2010TOKON10 プログレスレポート 第3号 ひなまつりお祝い号

実行委員長挨拶

みなさまこんにちは2010TOKON10実行委員長の立花です。
「一月はゆく、二月は逃げる、三月は去る」といいますが、その言葉どおり、もう二月が逃げていきますねww 大会まであと5か月になりました。果たして準備は間に合うのでしょうか? ドキドキ♪ ここはみなさまのお力添えが必要絶対条件ですので、ご協力をお願い申し上げます。スタッフ、ボランティア、常時募集中です。

さてこのところ訃報が続きました。みなさまご存知のとおり、1月16日に日本のSFの父ともいえる柴野拓美(小隅黎)さんが、また2月14日には翻訳家の浅倉久志さんが亡くなられました。今私たちがここにいてもいい世界を作ってくださった、またその世界を楽しませてくださったお二人に心より哀悼の意を捧げます。

日本にSFファンダムをつくったのは柴野さんです、柴野さんがいらしたからこそ、今のファンダムができ、こうしてSF大会が開かれるようになったのです。第1回SF大会MEGCONは柴野さんのご尽力があったからこそのもので、それがこうしてして第49回まで続いてきているのです。「SFマガジン」に先駆けて「宇宙塵」というSF同人を作り、多くの作家を育ててきたのも柴野さんでした。

またその世界で私たちを海外SFに触れさせてくださったのは浅倉さんでした。浅倉さんの翻訳があってはじめて私たちは数多くの海外作品を読むことができたのでした。それはもうどの本がということもできないくらいではないでしょうか? 浅倉さんの訳は本当に名訳といえる美しい言葉で作られていました。

柴野さん、浅倉さん長い間ありがとうございました。そしてお疲れさまでした。どうぞごゆっくりとお休み下さい。この夏も私たちはお二人がつくりあげてくださった世界で遊ばせていただきます。きっと来年も再来年もずっとずっと……

柴野拓美氏柴野拓美氏 浅倉久志氏浅倉久志氏

開催概要

第49回日本SF大会 2010TOKON10
テーマ
首都大会EDO ―電脳金魚の大冒険―
会期
2010年8月7日(土)・8日(日)
会場
タワーホール船堀 (東京都江戸川区)
定員
1000名
参加費 (2日分)
一般1万2千円【2010年4月末までに申し込みの場合】
学生6千円【2010年8月7日時点で高校生以上の学生】
  • TOKON10公式サイトにてお申込み受付中!
    公式サイトの「参加登録」からどうぞ。
  • 郵送、FAXによるお申し込みは、公式サイトの「参加登録」から、申込書をダウンロードして、以下の宛先まで。
  • 〒 102-0073
    千代田区九段北 4-1-13 ニュー原鉄ビル5F
    (株)クイックス東京内 「TOKON10」実行委員会
    FAX: 03-3221-9141

実行委員会からのお知らせ

あのコスプレのキャラが見たい!
  • あなたが見たいSFキャラを実行委員会に教えてください。
  • これまでのSF大会で見たSFキャラの中で、ぜひもう一度見たいと思うものを教えてください。
  • 近日中に公式サイトに申し込み窓口を設けますのでふるってご応募ください。
スタッフ募集!
  • 定期的にスタッフ会議に参加して大会の運営を支援してくれるスタッフを募集しています。また、当日のみのボランティアも募集しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
  • お申込後にメールアドレス、住所その他に変更が発生した場合は、実行委員会までご連絡をお願いいたします。(公式サイトの「お問い合わせ」からどうぞ)
  • 一般の参加費が1万2千円なのは2010年4月末までです。まだお申し込みの済んでいないお友達には早く申し込むようにお勧めください。
  • その他の疑問点につきましては、TOKON10公式サイトのFAQをご覧ください。随時更新する予定ですので、定期的にチェックなさることをお勧めします。
TOKON10公式サイト
http://tokon10.net/
コスプレ申し込み先
cos@tokon10.net
連絡お問い合わせ先
info@tokon10.net

企画局からのお知らせ

企画募集開始しています。
  • 今年のSF大会では、Webで企画申込ができるようになりました。以下のページよりご案内しております。SF大会ならではの、アイディア溢れる企画をお待ちしております!
  • 不明な点がありましたら、スタッフまでお尋ねください。また、詳細など相談が必要な際は、ぜひ定例会議にお越し下さい。
ディーラーズの申込はもうすぐです。
  • お待たせしております。ディーラーズの申込受付は、もう少しお待ちください。こちらもWebから登録ができるように画策しております。始まり次第、サイトで告知いたしますので、チェックしてみてください。
企画申し込み先
http://tokon10.net/register/program_registration.html
応募多数のため企画の受付を停止させていただきます。ご協力ありがとうございます。
お問い合わせ先
info@tokon10.net

現在、いただいている企画の一部をご紹介いたします。

グイン・サーガを振り返る
作者早逝により未完となった「グイン・サーガ」。その30年を振り返り「グイン・サーガ」とは何だったのかを検証します。
Speculative Japan
様々な作品をSpeculative fiction として読み直す! Speculative fiction の可能性を再考する。
出演:増田まもる、藤田直哉、ほか
日本SFいろいろ史
江戸末期から始まる未来、科学、冒険への楽しい空想力から、現代SFへの道を(どこまでたどれる?)
出演:北原尚彦、長山靖生、日下三蔵、牧眞司
電脳金魚を描く
画家さんたちにお願いして、電脳金魚を描いていただいています。続々交渉中!
SF天文同好会 第2回例会
星の好きな大会参加者の交流を図る。SF作品から本物の星に興味を持った人への天体観測指導
「宮」以後の韓国純情漫画のSF・ファンタジー
韓国のストーリーマンガの1ジャンルである純情漫画(日本の少女マンガに相当)。その中でパク・ソヒ作「宮」が人気となり、日本語翻訳版コミックス「らぶ きょん」(新書館)の刊行も定着、続いてイム・ジュヨン作「シエル」、チョン・ヘナ作「タムナは島だ」も翻訳が始まりました。この韓国純情漫画の最近の注目作と、「宮」が韓国純情漫画に与えた影響と影響下に現れたと思しき作品群を、SF、ファンタジー作品に絞って紹介します。統計資料的な話や体系的な話は出来ませんので、コミックスの現物を見てもらいながら、まったりとやりたいと思います。
ペリー・ローダン夏期講習2010
ドイツ人の職人仕事が生んだ世界最長のスペースオペラ=ペリー・ローダンは、昨年ついに2500話を越えました。複雑怪奇な超展開をコワイモノ見たさで覗いてみたいという皆さんに、最新の動向をお届けしたいと思います。
第20回暗黒星雲賞
とうとう20回目を迎えた暗黒星雲賞。企画、ゲスト、コスチューム、自由の4部門を参加者からの投票で決定します。投票の理由はすべて投票者の自由となります。投票者の中から抽選で決まる幸運部門もあります。
慶應義塾大学グローバルCOEプログラム市民講座「幹細胞医学がみる夢」
慶應義塾大学グローバルCOE「幹細胞医学のための研究教育拠点」では、再生医療の実現化に向けたさまざまな研究を行っています。本市民講座では、本プログラムの成果報告とともに第一線の研究者による最新の知見の報告やパネルディスカッションをおこない、SF的発想力や人文知の融合によるあらたな生命科学像を提示します。
出演:岡野栄之(慶應義塾大学教授)、瀬名秀明(作家)、東浩紀(哲学者・批評家・作家)、八代嘉美(慶應義塾大学特別研究助教)
シールコレクション
毎度おなじみのシール屋さんです。
大学SF研の今までとこれから その3 (副題未定)
今の大学SF研会員はどんなイベントに参加したいのか? そこを探りつつ、そのようなイベントを行うにはどうすればよいか、ということをワークショップの形で実施予定です。2日間に分けて初日にワークショップ、2日目にその結果を専門家に講評してもらう形で構想中です。
出演:田中創、各大学SF研会員
全国対戦ゲームの隆盛に見るゲームセンターの今後
「クイズマジックアカデミー」や「ボーダーブレイク」などの全国対戦型アーケードゲームが増えてきてゲームセンターの雰囲気も昔とずいぶん変わってきた。全国対戦型のアーケードゲームが生まれたきっかけ・稼働までの問題点・そして今後はどうなっていくのかなどを開発に携わった人たちに話してもらう。
手作りプラネタリウムと3D映像
プラネタリウムと全天周立体映像の投映。1回20人15分毎に投映。暗黒星雲賞2連覇。
時刊新聞社
SF大会内の出来事・投稿記事を、1時間に1号(以上)編集し、発行・配布・掲示を行います。SF大会期間中は、大会内の情報伝達、およびコミュニケーション媒体として、また過去の記録として縮刷版の発行販売を行います。
志村式折り紙キングギドラ普及教室
紙1枚から、首が3本、羽が1対、尻尾が2本のアイツを折ります。鶴が折れるなら難しいところは2箇所だけ。ただし、ひたすら折るので時間がかかります。企画時間が長いからといって途中から来ると折り上がらないかもしれません。覚悟を決めて早めのご来場をオススメします。SF大会の思い出に技術(笑)を身につけたいヒト向き。
出演:志村弘之

聖地巡礼

都内にあるSFファンの聖地を訪ねて歩く企画です。第3回は日本SF作家クラブ発足の地としてあまりにも有名な西新宿五丁目の台湾料理店「山珍居」です。今回はいつもの広報局スタッフ小谷真理と藤田直哉に加えて、石川喬司さん、新井素子さん、井上雅彦さん、巽孝之さんをゲストにお迎えし、TOKON10実行委員長の立花眞奈美、当レポート編集長の増田まもるも参加して、美味しい料理に舌鼓を打ちながら、結成当時の貴重な録音に耳を傾けてまいりました。藤田直哉による報告記事を、写真、動画とともにお楽しみください。

第3回 日本SF作家クラブ発足の地「山珍居」編

さて、SF聖地巡礼も3回目。今回は、日本SF作家クラブが1963年3月5日に結成されたという、西新宿五丁目の台湾料理店「山珍居」である。結成メンバーの一人である石川喬司さんと、現SF作家クラブ会長新井素子さんと、現事務局長井上雅彦さん、そして巽孝之教授と小谷真理さん、プログレス・レポート編集長の増田まもるさん、そしてTOKON10実行委員長である立花眞奈美さん、末席を汚すのはわたくし藤田直哉。錚々たるメンバー(と錚々じゃないわたくし)で「山珍居」にお邪魔して、美味しい台湾料理に舌鼓を打つことになった。

本日のメインイベントは、福島正実さんがオープンリールで録音していたという、大変貴重な1963年3月5日発足当時のテープを聴くことであった。一同息を潜めて、テープの肉声に耳を傾ける。この歴史的な場には、石川喬司・小松左京・川村哲郎・斎藤守弘・斎藤伯好・半村良・福島正実・星新一・森優・光瀬龍・矢野徹(敬称略)の11人がいらっしゃったのだが、声だけでは判別できないので、石川さんに、これは小松さん、これは光瀬さん、これは星さん、これは半村さんと教えていただく。この内容については最相葉月さんの『星新一 一〇〇一話を作った人』311ページ以降に詳しいのだが、いざ実際に肉声を聞いてみると、声色や息づかい、当時の雰囲気と熱気、そしてそれぞれの言葉遣いなど、文字ではとうてい表現しきることの出来ない様々な感触が生々しく伝わってきた。

それはまた、巽孝之教授ですら驚きの声をあげ、新井素子さんも感嘆の声をあげるような内容であった。1957年に『宇宙塵』が創刊され、1959年に『SFマガジン』が創刊されたこの当時、集まっているSF作家達は、“プロ”ということに非常にこだわっており、売れるSFということばをしきりに繰り返し、マーケットに発表の場を確保していくことに対して非常な危機意識を持っていたようである。これは柴野拓美の『宇宙塵』での激烈な批評に対してSFマガジンで書くことになっていた作家達が自己防衛しようとした部分が存在していたようだ。(この辺りに関しては福島正実の『未踏の時代』と「宇宙塵四十年史」編集委員会編『塵も積もれば』を参考にすると立体的な像が浮かび上がる)

もう一方でしきりに“江藤淳”という名前が挙がったのも驚きであった。石川喬司の「戦略的SF論」から孫引きすると、「SFが通俗小説であるのは、それが科学という固定観念を前提にしているからである」などと評されていたらしい。文学/SFという、小説を巡る価値判断の規範を巡る闘争の意識がここには確実にある。連判をとると言っているところからみても、これは闘争的・結社的な意味合いすら持って生まれた団体であった。生みの親である柴野拓美への謀反(巽孝之はこれをエディプス過程になぞらえていた)の側面と、「文学」に対する闘争の意味合いが大きく、ここでは特に「評論」が重視されていたことも特記すべきなのかもしれない。ちょうど福島が訳したように、SFは『幼年期の終り』を迎えて、大人になろうとしていたところであり、最初の父=柴野と戦い、そしてより大きな権威たる文学に戦いを挑むところであった。
「親睦団体になってはいけない」と、多分福島がしきりに繰り返していた(音声の聞き取りが難しいため、間違っているかもしれません)。それに対し、現会長の新井氏は「親睦団体にしちゃいましたけど」と困惑していた。石川さんは、「当時とは人数も状況も違う」という意味のことを仰っていた。確かにSFはその後、マーケット的にも、世間的な認知にしても、さらに文学としても、着実に広がっていった。筆者の「SF作家クラブ結成の理念は達成されたと考えていいですか」の問いに、石川さんは頷いた。むろん、達成されたが故の問題もまた存在しないわけではない。とはいえ、この11人によって発足した日本SF作家クラブが、今や200人を超える会員を擁し、もう少しで50年にならんとする歴史を刻んできたのである。これは途轍もなく凄いことではないだろうか。

SFをやっていると変人に思われる、などという発言もたびたび聞こえてきた。しかし、今やSF的なものは、世の中のあらゆる表現媒体に溢れかえっている。この当時の11人の決起と闘争が、こんなに実り豊かな成功を迎えるとは、いったい誰が想像できただろうか。いや、あるいは、この当時のSFは、「未来の文学」として、それほどまでになると、本気で信じて希望を持っていたのかもしれない。遠近法的倒錯なのかもしれないが、この当時に「SFをやろう」と考えた人々の苦労と熱意の結果を考えると、とんでもないことだと思える。こんなことが可能だと、一体今の誰が信じられるだろう? でも、可能だったのだ。

テープを聴き終えたあと、しばし3D映画『アバター』の話で盛り上がったが、それは、未だに僕たちが驚くことのできるSFがこれからも現れ続けることができるという期待と希望を込めての、盛り上がりだったのかもしれない。多分そういう作品は、これからも生まれ続けるし、生み続けることが出来るはずである。日本SF作家クラブ結成のときに、ひとりひとりの心の中でSFの未来がとても大きく広がっていたように、今でもまだ見知らぬ未来が大きく広がっているのではないだろうか。そこはまだ誰も歩いていないから、誰も見つけられていないのだ。このSF作家クラブ結成の熱気にあてられて、現代もまた「未踏の時代」なのだと発想を転換してみたくなったし、実際にそうなのではないかと、半ば思っている。可能性はまだまだあるはずだ。

聖地へ向かう巡礼たち(井上雅彦/藤田直哉/増田まもる)
聖地へ向かう巡礼たち(井上雅彦/藤田直哉/増田まもる) 巡礼団の全貌 (後列:藤田直哉/立花眞奈美/井上雅彦/新井素子/増田まもる) (前列:小谷真理/石川喬司/巽孝之)
巡礼団の全貌
(後列:藤田直哉/立花眞奈美/井上雅彦/新井素子/増田まもる)
(前列:小谷真理/石川喬司/巽孝之)
座談会の模様
座談会の模様

座談会は主に石川さんにお話を伺う形で進み、石川さんと手塚さんの対談されている貴重なテープも拝聴することができた。この座談会はTOKON10のスーベニアブック(参加者に配布される書籍)に収録される予定である。石川さんはリールデッキを担いで淀橋浄水場を歩いた話など、興味深い話をたくさんしてくださった。このレポートではとてもその細部まで書く紙幅はないので、スーベニアブックに期待されたい。また、今回のTOKON10のスーベニアブックは、東京SFファンダム史という、商業媒体に残らないファンダム史の記録を大量に盛り込んだ貴重なものとなっており、この機会を逃すと手に入らないかもしれないので、是非大会に参加されてご入手していただきたいと思う。

なお、この日の模様は一部動画で公開しているので、店の雰囲気などを映像で見たい方は以下のURLにアクセスして欲しい。店内には筒井・星・小松・光瀬さんが一同に会した貴重なサインも飾られていた。
http://www.youtube.com/user/fujitanaoya

(藤田直哉)

広報局からのお知らせ

  • TOKON10公式ブログでは、「東京SF大全」と題して、11月より毎月1のつく日(1、11、21、31日)に東京の出てくるSF作品を紹介していく予定です。とくに31日には、「31日スペシャル」として、本格論文「東京SF論」を掲載する予定です。
    公式ブログ: http://blog.tokon10.net/
  • TOKON10広報局では「東京SF大全」の執筆者を募集しております。なんらかの形で東京が登場するSF作品であれば、小説、映画、アニメを問いません。200字〜400字をめどに、以下のメールアドレスにお送りください。
    e-mail: info@tokon10.net
発行
第49回日本SF大会 TOKON10 実行委員会
編集
広報局
発行日
2010年2月28日
HTML版発行日
2010年2月28日

プログレスレポートHTML版

Produced by Tokon10