第49回日本SF大会 2010 TOKON10
首都大会EDO―電脳金魚の大冒険―
2010年は東京でSF大会

第49回日本SF大会 2010TOKON10 プログレスレポート創刊号

実行委員長挨拶

こんにちは実行委員長の立花眞奈美です。

秋もだんだん深まってまいりました。

またローカルコンがあちらこちらで開催される季節になりましたね。

私もどこか行きたいな、と考えているところです。

思い起こせば、初めての大会はTOKON6(1976年)でした。

高校の先輩がSHINCONに参加したという話を聞いて、SF大会に行ってみたいな、と思ったのでした。

ちょうどその翌年がTOKON6ということで、高校最後の夏に参加したのでした。

それから34年後にまさか自分がTOKONの歴史を引き継ぐようになるとは、その時には考えてもみなかったことです。

私があの時楽しんだように、みなさまにも楽しんで頂きたいと思っています。

実行委員会の方もいくつか企画が持ち込まれたり、大会企画を提出したり......

こんな話聞きたい、あんな事やりたい等々ございましたら私たちの方へお知らせ下さいね。

また実行委員会では常時スタッフを募集しています。みんなで大会を作っていきましょう。

さてお待ちかねプログレス・レポート創刊号の発行です。

これからTOKON10の情報等を発信していきます。

どうぞお楽しみに!

開催概要

第49回日本SF大会 2010TOKON10
テーマ
首都大会EDO ―電脳金魚の大冒険―
来年の夏は東京でSF大会!
会期
2010年8月7日(土)・8日(日)
会場
タワーホール船堀 (東京都江戸川区)
定員
1000名
参加費 (2日分)
一般1万円【2009年中に申し込みの場合】
学生6千円【2010年8月7日時点で高校生以上の学生】
  • TOKON10公式サイトにてお申込み受付中!
    公式サイトの「参加登録」からどうぞ。
  • 郵送、FAXによるお申し込みは、公式サイトの「参加登録」から、申込書をダウンロードして、以下の宛先まで。
  • 〒 102-0073
    千代田区九段北 4-1-13 ニュー原鉄ビル5F
    (株)クイックス東京内 「TOKON10」実行委員会
    FAX: 03-3221-9141

実行委員会からのお知らせ

  • お申込後にメールアドレス、住所その他に変更が発生した場合は、実行委員会までご連絡をお願いいたします。(公式サイトの「お問い合わせ」からどうぞ)
  • スタッフを募集しております。当日のみのスタッフも募集しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
  • 参加費が1万円なのは年内いっぱいです。まだお申込みの済んでないお友達には是非年内のお申込みをお勧めください。
  • その他の疑問点につきましては、TOKON10公式サイトのFAQをご覧ください。随時更新する予定ですので、定期的にチェックなさることをお勧めします。
TOKON10公式サイト
http://tokon10.net/
お問い合わせ先
info@tokon10.net

聖地巡礼

SFファンにとっての聖地を訪ねて歩く企画です。第1回は『宇宙塵』創刊号誕生の地、目黒・大岡山編です。広報局スタッフの小谷真理と藤田直哉が取材を敢行し、藤田が記事を執筆しました。今後、プログレス・レポートでは日本のSFファンの聖地を順次紹介していく予定ですので、どうぞご期待ください。

第1回 目黒・大岡山編

日本SFを少しでも知っている人間であれば、誰しもが一度は聞いたことのある輝かしい伝説的な名前――『宇宙塵』。まだSFというものが商業的ベースに乗る以前に柴野拓美が結成したその日本初のSF同人誌の凄さは、そこから巣立った作家の名前を挙げるだけで理解できるだろう。紙面の都合で全員を書くことが出来ないのが残念だが、主要な作家としても星新一、小松左京、筒井康隆、矢野徹、堀晃、荒巻義雄、半村良、平井和正、広瀬正、眉村卓、光瀬龍、山田正紀、山野浩一などの名前を挙げられる。これだけの作家が、一つの同人誌に集まり、それからSF作家として商業的に華々しい活動をしていったということは、端的に驚き以外の何ものでもない。

『宇宙塵』に驚くのは、それがまだ日本に商業的なジャンルとしての「SF」が全く根付いてもおらず、成功してもいない時期から、同人という形でSFを育成し、文学運動として、その後の大成功を収め、我々が今本屋に行けば早川SFや創元SFが買えるという当たり前のこの状況を作ったということである。この「日本のSF界」をゼロから創造したと言われる同人誌の果たした役割や、そこに関わった人々の偉大なる努力は、SF作品を当たり前のように摂取し楽しむことが出来ている僕のような世代には想像も付かない偉業である。「SFという文学」を定着させようとする運動の熱気は、強い羨望を伴って僕の中で神話化されている。

その『宇宙塵』が結成されたという場所は、柴野が通っていた東京工業大学のすぐ近くの柴野宅であった。僕は東京工業大学に在籍しているので、まさか『宇宙塵』結成の地がこんな近くにあるとは思わず、驚いた。大岡山駅から柴野宅までの道は、普段、よく歩く道だった。もし柴野宅に星新一やその他前記の作家たちが来ていたのだとしたら、何十年前かに、確実にこの道を歩いていたはずであり、そのことに自分が気づかずに歩いていたのだと知って、途端に僕はタイムスリップしたような気分になり、頭がくらくらしてきた。今でこそ『餃子の王将』とか『マツヤデンキ』とかのけばけばしい看板に彩られているこの道を、未来にSFを花咲かせようと、『宇宙塵』の作家達は、不安と希望に満ちた心持ちで高揚しながら歩いていたのだろうか。

柴野宅は閑静な住宅地の中にあった。SFというと、猥雑でジャンクな要素が魅力の一つであるが、その生まれた地の一つでもある大岡山の柴野宅の周辺は、高級住宅地の雰囲気すらある、ハイソな空間だった。やがて、その家が見えてくる。まさか当時の建物が現存するわけはないと思っていたが、どうやら残っているようだ。白くて、広くて、古い趣のある瀟洒な邸宅は――なんとなく明治期の文豪とかのサロンをどこか思わせるようで――表札が違う名前になっていたものの、その近くに「柴野」という表札も残されていた。これはひょっとして、当時のままなのだろうか。
写真: "大岡山一丁目14"の看板

ここに集まって、SF同人誌を結成した瞬間の彼らは、未来の成功を想像していただろうか。商業出版は成功し、アニメ・マンガにはSF作品が溢れ、SF的想像力は一般的なものになり、各地には沢山の愛好会や同人誌が組織され、SF大会は開催され続け、豊かで質の高いファンダムが形成され――こんな大規模な成功の未来を、想像していただろうか。

ここには「未来」があったのだ、と僕は感慨を覚えた。「未来の文学」としてのSFと、そのSFを啓蒙し、発展させるという「未来」が。と同時に、僕は強い嫉妬を覚えた。どうして今僕はこれから発展していくであろう新しい文学運動に身を投じて「未来」を夢見ることが出来ないのかと。90年代後半以降のSFは――『サマー/タイム/トラベラー』などを筆頭に、同時代の閉塞感を体現して、「未来」への希望を持ったビジョンへの疑問を呈し始めた。日本の高度成長の終わりと出版不況などにより、希望を持った「未来」像が描けなくなったのだ。だが、1957年のここには、その「未来」は、不安と怯えも混じえつつも、希望として確実にそこにあったのではないのだろうか。そのことに、僕は強い嫉妬を覚えざるを得ない。そこに参加できたら、どんなに良かっただろうか――

だがそんな嫉妬は本末が転倒している。彼らの血のにじむような努力のおかげで、僕のような何者でもない人間が地方都市の小さな本屋に通って、SF作品を読むことが出来る環境となったのだから。そう、だからこそ今、僕らが考えるべきことは、彼らが文学・芸術・文化運動として発展させたSFを、維持し続けることとともに、彼らが「SF」という言葉に賭け、未来に向けて何か新しい価値を発信し続けた情熱を受け継ぐことなのではないのだろうか。「SF」自体を受け継ぎながらも、「未来」を夢見た情熱自体を継承すること――

ともすれば閉塞感と絶望感に捉われがちな1983年生まれの僕が、この『宇宙塵』結成の地に赴いて彼らの見た「夢」を想像するに、この時代にもう一度取り戻すべきなのはその情熱なのではないかと感じた。

スティーヴン・キングの『シャイニング』のように、建物自体にその場所の記憶や歴史の亡霊がとり憑くのであれば、柴野宅にとりついた歴史や希望や夢を、僕も吸い込めないだろうかと、強く呼吸してみた。
写真: 大岡山の町並み

(藤田直哉/文中の敬称は略させていただきました)

広報局からのお知らせ

  • TOKON10公式ブログでは、「東京SF大全」と題して、11月より毎月1のつく日(1、11、21、31日)に東京の出てくるSF作品を紹介していく予定です。とくに31日には、「31日スペシャル」として、本格論文「東京SF論」を掲載する予定です。
    公式ブログ: http://blog.tokon10.net/
  • TOKON10広報局では「東京SF大全」の執筆者を募集しております。なんらかの形で東京が登場するSF作品であれば、小説、映画、アニメを問いません。200字〜400字をめどに、以下のメールアドレスにお送りください。
    e-mail: info@tokon10.net
発行
第49回日本SF大会 TOKON10 実行委員会
編集
広報局
発行日
2009年10月31日
HTML版発行日
2009年12月28日

プログレスレポートHTML版

Produced by Tokon10